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第82回

日時 2025年9月10日(水)14:30~16:30
場所 りそなプライベートサロンReラグゼ
大阪府大阪市北区角田町8-1(大阪梅田ツインタワーズ・ノース24階)
講師 日本経済新聞・本社コメンテーター
 秋田 浩之
テーマ トランプ外交、世界にもたらす衝撃~海外取材の現場から~

鷲尾所感

関西アジア倶楽部の第82回「トランプ外交、世界にもたらす衝撃~海外取材の現場から~」、日本経済新聞コメンテーター・秋田浩之さんの話、いかがでしたか…。

秋田さんは冒頭、新聞記者にはこれまで3種のタイプがあったと述べられ、

  • サラダ。或いは寿司担当(官庁や会社など、発表記事を報道する)
  • ビーフシチュー或いはパスタ担当(仕入れた記事を加工する)
  • 論説・編集(社会の行く末の先導係)

だが、日経がFinancial Timesを買収したことで、FT記者の陣容を熟知するようになると、もう一種類のタイプ、謂わば、スープ担当(仕入れた情報を煮込み、加工して、今まで味わったことのない解説を行う)があることに気が付いた。それがコメンテーターという肩書の記者、自分はその役割を演じている、そんな自己紹介をされました。“言い得て妙だ”と感じました。

コメンテーターの仕事は、出来るだけ多くの国際会議に出て、識者と議論し、情報を仕入れ、分析の視覚を養い、新しい切り口で事態を分析・加工する。

そんな目で、現在のトランプ政権を眺めると、先ず、その権力構造の在り方が、従来型の“異なる派閥の寄り合い”等ではなく、むしろ、トランプと言う、太陽の周りを周遊している月や火星、土星等に、その在り様が近いと指摘されました。絶対権力者トランプは、謂わば、太陽そのもの。トランプへの忠誠を疑われれば、たちまち太陽圏外に追いやられる。

だが、そんな力関係で実施されるトランプ外交には、決定権者がトランプだけというのが実態だけに、“危うさ”が付きまとう。つまり、従来型のグループ対立が閣内にあれば、相互牽制でチェックも効くが、トランプ太陽系だと事前調整など行なわれ得ない。ホワイトハウス内の国家安全保障チームは事上解体され、各部署を担当する閣僚や補佐官たちは、生き残りに四苦八苦している。

そんな体制下で、トランプの歴史観が直截に前面に出て来る。

トランプは、「何十年にわたって、米国は世界の各国から搾取され続けてきた」との被害者意識に懲り固まっている。例えば、軍事的には、米国は同盟国にただ乗りされ、経済的には、各国から米国内市場にただ乗りされ、ドルを世界に供給して、謂わば、公共財を提供させられ続けてきた。

そんなトランプにとっては、外交とは、米国がむしり取られた債務を、取り返すこと。つまり、Deal。

唯その形態の意は3種あり、対等な立場でDealを行うのは中国やロシアといった大国だけ。中小諸国・地域(グリーンランドやパナマ、ウクライナ、ガザ等など)は、捕食の対象(捕まえて食べる)。第3種は、欧州や日本などで、強制・強圧で押しまくる(つまり、ミドルパワーは相手にせず、強圧あるのみ)。

そうした状況下、中国との関係はどうなる…、民主主義国との関係はどう変質する…、ウクライナの将来は…、中東情勢は…第3次世界大戦のリスクは…、日本はどうすれば良いのか…。

質疑はこんな問題に触れ、極めて活発でした。
世に氾濫している各種情報を自分なりに整理し、分析して。全体の体系を想定する。国際情勢をフォローし、何が問題か見つけ出すのが問題だと、心底、思い知らされた今回の会合でした。 

出席者は皆、大変感銘を受けられたと、主宰者として、喜んでおります。

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