開催実績

第83回

日時 2025年10月20日(月)14:30~16:30
場所 りそなプライベートサロンReラグゼ
大阪府大阪市北区角田町8-1(大阪梅田ツインタワーズ・ノース24階)
講師 BNPパリバ証券株式会社 経済調査本部長チーフエコノミスト/東京大学先端科学技術研究センター客員教授
 河野 龍太郎
テーマ 日本経済の抱える諸問題

鷲尾所感

関西アジア倶楽部の第83回「日本経済が直面する諸問題」、BNPバリバ証券経済調査本部長・東京大学先端科学技術研究センター客員教授・河野龍太郎さんの話、いかがでしたか…。

河野さんの話は極めて明快。「日本の実質賃金が低迷しているのは、生産性の問題ではなく、分配の問題、生産性が上昇しているにもかかわらず、実質賃金が上がっていないから、個人消費が低迷し、それ故投資は国内ではなく、海外ばかり」。「今流行りのコーポレート・ガバナンスも問題」、「短期の利益を追求する株主の要求で、時間を要する人材育成が困難になり、経営者はコストカットに邁進」等など。

小生が河野講師と知り合ったのは、1990年代前半、ニューヨークで会食させていただいたのが最初です。このことを講師は、本講演依頼の際、懐かしく語ってくれました。私事ですが、関西アジア倶楽部を主宰させていただいて以来、人と人との繋がりの不思議さを感じております。

これまでの講師の方々も、小生の人生のどこかで接点を持たせていただいた方が多い。一度接点があると、努力していると、再び結びつきが生じてくるものだ、と…。

河野さんのご指摘には、はっとさせられるものが実に多かった。日本の大企業経営者は、「長期雇用制の枠内で賃金カーブが下方シフトしていることに余り気づいていない。現在の部長・課長の給料は、四半世紀前の部長・課長よりも低くなってしまっている」。「賃金カーブの下方シフトだけではなく、人口動態の変化(団塊世代問題、バブル世代問題、少子化等など)で、賃金カーブそのものがフラット化している」。「米国等と異なり、大卒比率の上昇が大卒ホワイトカラーの賃金を押さえた可能性もある等など」。

河野さんのご高話では、上記のような指摘が次々と続きました。目から鱗のプレゼン、それ故、その後の質疑も極めて活発でした。

主宰者の感想を最後に述べさせていただければ、日本の経済・社会には、多くの変化が起こっており、経営層や政治の中心層は、その変化に余り気づいてこなかった。専門家や研究者も、その変化は指摘しても、具体的な対応策を提言してこなかった。

もっと端的に言えば、新しい現象に気づき、新しい仕組みを考案し、それを社会に取り入れる、そんな思考と政治の結節が観られなかった。知的怠慢、政治の怠慢、経営の怠慢…。結局、日本の知は、後知恵の域を出ていないのではないかと…。

いずれにせよ、出席者は河野さんの数々のご指摘に、深い感銘を受けた様子でした。

前回と同じようなコメントで、今回も終わらせていただきます。

世に氾濫している各種情報を自分なりに整理し、分析して、全体の体系を想定する。情勢をフォローし、何が問題か見つけ出すのが問題だと、心底、思い知らされた今回の会合でした。 それに、もう一言加えれば、問題を発見しても、対応策が付記されていなければ、社会的にはあまり意味がないのでは、と…。

そして、そんな潜在的問題に、先手、先手で策を講じることこそが、日本古来の政治の知恵だったのではないか、と…。先憂後楽とはよく言ったものではないでしょうか…。

当⽇の様⼦

開催実績の一覧

©一般社団法人 関西アジア倶楽部