| 日時 | 2025年11月11日(火)14:30~16:30 |
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| 場所 |
りそなプライベートサロンReラグゼ 大阪府大阪市北区角田町8-1(大阪梅田ツインタワーズ・ノース24階) |
| 講師 | 政府代表/特命全権大使(関西担当)2025年日本国際博覧会政府代表代理 三澤 康様 |
| テーマ | ドイツの経済・社会はどう変わったのか |
鷲尾所感
関西アジア倶楽部の第84回「ドイツの経済・社会はどう変わったか」、2025年関西万博日本政府代表代理を務められた三澤康・関西担当大使の話、いかがでしたか…。
三澤さんの直近のお仕事の、万博ではなく、彼がドイツ駐在経験豊富で、外務省でも屈指のドイツ通であることに着目し、今や日本を抜いて世界第3位の経済大国になっているドイツ、それに反し、来年には為替レートの関係もあって、インドに抜かれ、世界第5位にまで、国際社会の場での立場を落とすと想定されている日本。
この対比の中で、しかし、日本の前に出たドイツにも、眼前のウクライナ戦争、社会内面の移民や右派の台頭など、数多くの問題の芽が生じ、しかも、それが速度的に大きくなってきている。その実情を質疑したい。それが今回定例会の、主宰者としての問題意識でした。
三澤さんの話は極めて示唆に富んでいました。日本の“なぁなぁ社会”に対し、ドイツ社会は“aggressive”。何事にも、ルールを作って対応して行く。ドイツ憲法はこれまで60回以上改正されているとか…。こんな処にも、事情が変わればルールを変えて対処するドイツ人の考え方が鮮明に表れている。
しかし、そんなルール指向一本槍だけかと思えば、必ずしもそうとばかりではない。事に処するに柔軟性も持ち合わせている。例えば、欧州統合の過程で、ドイツはEUの中に溶け込むことを心がけたが、しかし、後日の東西両ドイツ統合の過程では、西ドイツのコール首相(当時)は、既にEUに溶け込んだ西ドイツが、東ドイツを飲み込む形を取り、欧州の中でのドイツの位置づけは変わらないが、東を飲み込むことで必然的に発言力は大きくなる策に依拠した。要は、こうした手法を取ることで、「強くなり過ぎても問題、弱すぎても問題」(キッシンジャー)とされた、歴史的課題だった、欧州におけるドイツ問題を、現実政治的に表面化させることなく、言い換えれば、EU内で何ら問題を惹起させず無難に処した、とのこと…。
三澤さんの話によると、2025年11月時点で、ドイツは5つの側面で時代の転換点を迎えている。
一つは、国内政治の転換点(2025年2月の総選挙でAFDが第二党(難民問題が大きく効いた)へ…、本格的な多党化時代が始まった。
二つは、安全保障政策の転換点。
三つは、財政規律概念の転換点。
四つは、エネルギー政策の転換点。
五つは、移民・住まい・社会統合の転換点(外国人が人口の2割)
こうした、講師のプレゼン後の質疑では、「ドイツにとってのロシア脅威感と日本にとってのロシア脅威感どう違うか」、或いは、「トランプへの対処の仕方、日独ではどう違うか」等々、興味ある質問が次々と飛び出しました。
一方、質疑を通じて、今風な問題、例えばIT社会の現状に関し、ドイツTELECOMの対応は誠にお粗末、或いは、インターネット・インフラの構築も不十分など、我々日本人には想定出来ないぐらい、ドイツの取り組みが遅れているらしいこともわかりました。更に、質疑では、産業構造の面での日独比較の話も出たし、移民の話す言葉を、如何にドイツ語化させるか等の問題点も浮き彫りになりました。
先の首相メルケルとロシアのプーチンの話も面白かった。東ドイツ出身でロシア語も話せるメルケルの、プーチンへの対応、トランプへの対応などの違いも、極めて興味深いものでした。そして、メルケルの、そうしたロシア傾斜が、エネルギー源のロシア依存を強め過ぎて、ウクライナ戦争勃発により、ドイツの弱みと化したが、ウクライナ戦争の激化とともに、ドイツの、それまでの安全保障面で後ろに下がってNATOの傘に隠れる姿勢が、今や一変、積極的な国防費増強に打って出るようになった、そんな立場の急変も、亦、極めてドイツ的なもののようでした。
いずれにせよ、ドイツの例を見て、日本の振りを直す、そんな意味で大変面白い議論が続出した定例会でした。会員・会友の皆様のご参加、感謝いたします。
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