| 日時 | 2026年2月6日(金)13:00~15:00 |
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| 場所 |
りそなプライベートサロンReラグゼ 大阪市北区角田町8-1(大阪梅田ツインタワーズ・ノース24階) |
| 講師 | 立命館大学教授(前駐中国日本国大使) 垂 秀夫様 |
| テーマ | 習近平の中国にどう対応すべきか |
鷲尾所感
関西アジア倶楽部の第86回「習近平の中国にどう対応すべきか」、垂秀夫前中国駐在日本大使のご高話、いかがでしたか…。
兎も角も、常在戦場の気迫に満ちた話し振りでした。出席者の多くも、その切れ味の鋭い論理と攻めの姿勢に感銘を受けた様子でした。
配られたレジメには、「戦略とは、国家が決定した目標を、どのような時間軸で、いかなる手段を利用して、実現するかという作法をいう。道義と理念とは無関係」との解説が付されていました。
そうした前提で話を始められたわけですが、最近の日本側の動きに対する、中国側の見方を、「日本国内の諸々の動きを個別に切り離さず、一連の企みとして理解する」そんな姿勢に徹しきっている、と解説されました。習近平主席の絶対権力と、最近の外交部や軍への粛清の厳しさを見れば、現在の中国側の動きを理解する、極めて分かりやすい説明だったのではと、今思い返しても感じ取れます。
それに対し、では日本側に、中国と対峙する戦略はあったのか…。その自問自答に対し、垂講師は、3点を指摘されました。
一つは、日本側に「中国と“友好”か、或いは“対峙か”、はたまた“争点管理か”、そもそもそうした基本的方針が確立されていない」。二つは、「高市総理の国会答弁、その発言と行動の積み重ねに、そもそも戦略的文脈や戦略目標があれば、必然的に出て来るはずの“視点がある筈で、それがあれば、避けるべき行為・発言”という逆算思考があったはず…」。
言い変えると、そんな戦略性は、あの時点の高市首相には未だ、準備不足で備わっていなかったのではないのか【鷲尾的表現】…)」。三つは、「安倍第一次政権時との対比をしてみれば、安倍政権も高市政権も「保守、親台、対中強硬」等は、その発言ぶりから見て似ているが、安倍総理は中国を“管理すべき対象と見てきた”が、高市総理の発言ぶりには、そうした姿勢が未だ不鮮明だったのではないか…。
ここで講師の話は、「中国の戦略思考」の解説へと進みました。中国には孫子に始まる戦略思考がある。そのエッセンスは、時間と認識を操る思考にあって、例えば、中国の台湾への強硬姿勢の中にも、「戦わずして、人の兵を屈するは善の善なるものなり」という考えが生かされているように思われる。
つまり、実際に戦いに至らなくとも、常時の威圧が、敵の戦闘心を大いにそぐ効果を持つ云々。
要するに、勝敗は戦う前に決まる(時間と認知への働きかけこそが大事)。毛沢東の持久戦論(敵を孤立させ、時間で勝つ)や鄧小平の鞱光養晦(爪を隠し能力を隠す)、或いは習近平の相対的国家安全観(世界秩序の再構築、米国との長期的戦略的闘争VS短期的戦術的安定)などは皆、“時間”を如何に中国にとって有利に使うか、そんな思考から生み出されてきたものだと…。
垂講師は更に、習近平主席の思考の中には、長期的には、中国に有利に変わるような構造変化への期待感があり、短期的には安定を志向し、自国の力の温存を図る、そんな思考があると、含蓄ある見方を披露されました。
講師のご高話から漏れ出てきた思考の結論は、「中国には中国流の時間軸を使ってのやり方があるのと同様、日本にも日本的やり方で、時間軸を自己の有利に効かせる思考があってもしかるべき…。そうした意味では、先ずは、日本も戦略的思考を取り戻し、それを実行する覚悟を固める。
故に、高市首相に求めるのは、「高い支持率は、戦略的思考を取り戻すチャンスであり、その場しのぎではなく、過去の類似事例や他国の経験を踏まえ、中国の本質を理解した上で、経済(対中依存の管理)、国家安全保障の管理、情や同義に左右されない人的交流、他国を交えた多層的外交等などを組み合わせた、総合的な対中戦略を構築すべきだ」、というものでした。
偏屈の小生はそこで、「しかしなぁ、中国の習近平長期政権に比べると、日本の政権は相対的に短期で終わるケースが多い。
そんな時間軸の長短差の中で、日本に本当に長期戦略的対中政策構築が可能なのだろうか…」、「日本には、嘗て東大の西部邁教授が言った、国の安全保障を米国に依存する、平和ボケ的感性が今猶染みついたままなのではないか…」等など、ついつい頭には、その種の悲観論も湧き出てきてしまって困ります。
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