開催実績

第89回

日時 2026年5月22日(金)14:30~16:30
場所 りそなプライベートサロンReラグゼ
大阪市北区角田町8-1(大阪梅田ツインタワーズ・ノース24階)
講師 日本経済新聞本社コメンテーター
 中山淳史
テーマ 日本の製造業は何故、低迷するようになったのか~日本産業復権に向けての解を求めて~

鷲尾所感

関西アジア倶楽部の第89回、「日本の製造業は何故イノベーティブでなくなったのか」、中山淳史・日本経済新聞本社コメンテーターとの質疑、いかがでしたか…。

失われた30年を云々される以前は、日本の製造業は文字通りに、世界に冠たる存在でした。

それが、デフレと低成長を余儀なくされた、この30年の間に、事情は一変してしまった。“何故”そんなことになったのか…。この質問への適切な答なくしては、今後進めるべき、日本の再建も実効的なものにならない。このような想いから出た、今回のテーマ設定でした。

中山さんは、現代のデジタル時代とそれ以前の時代の違いを、技術の伝播衝撃の範囲の広さ、物量、そしてスピードの3点から解析されました。

30年前は、いわば総合電機製造業の時代。日本の製造業は、そんな時代の覇者だった。

しかし、そんな優越的立場も、日米通商摩擦を介した米国からの政治圧力や、その後のコーポレート・ガバナンス時代の経営の在り方、具体的に言うと、経営面でのオーバー・プラニング、計画を立てる際のオーバー・アナリシス、そして政府などからの“過剰な“法令順守要求といった、3つの過剰が、企業経営の重石となり、結果、計画と実践との間に大きな溝ができるようになってしまった。

更に、そうした事態を調整するための改善がおろそかにされ、その結果、2015年の東洋ゴム事件や、最近ではニデックなどの企業不祥事事件が続出する事態となったのだ、と……。

そうした総合電機製造の時代と比べて、現在は、デジタルの時代。

この時代の特色は一言で言えば、「ナレッジが伝播しやすい」。つまり、コピペし易い。そんな産業の基本特質が、以前と違ってきたことに加え、日本企業の遅い意思決定、不徹底な物量動員、最新技術を装備した人材の不足などが重なって、結果、日本の経営は、意思決定と投資のスピードで韓国・台湾に負け、圧倒的な物量で中国に負け、人材と資金の面で米国に後れを取ってしまった。

別の観点から見れば、日本の製造業のやり方は「持続的イノベーションタイプ」。嘗て盛隆を誇った日本の自動車産業だが、ホンダが崩れ、日産が後退する中で、現状、トヨタだけが曲がりなりにも、生気を保っている。

同社には、看板方式や、藤本教授の「ものずくり」至上主義などが、未だ尚生き続けている。しかし、こうした踏ん張りも、手をこまねいていると、知らぬ間に抜け殻になる可能性も懸念される。

要は、世界の製造業の主流は、嘗ての日本の、“持続的イノベーション”ではなく、今ではむしろ“破壊的イノベーション”が、経済発展の推進役を担う時代を迎えているのだ。

そう言った意味で考えると、改めてテスラの凄さが実感できるのではないか…。「何がすごいか」。それは、買った後に、価値は逆に増える可能性を秘めている点。自動車は益々ソフト化し、少し古くなっても、導入しているアプリなどを入れ替えて最新版のものにすれば、機能はアップする。

要は、電気自動車は、AI技術などの発展で、古くなっても新鮮味と創造性を新たに付加できるようになったのだ。そして、そんな電気製品で強みを発揮しているのが中国。

皮肉なことに、トランプ大統領の登場で、米国はむしろ石油や天然ガスに逆戻りし、それに反し、中国は一気に21世紀型産業(EV、田地、レア―アース、ドローン)の主要生産国になった。つまり、言い換えると“電気国家”になったのだ。そして、こうした米中産業の発展の方向性が正反対になりつつある今、日本の産業が米国一辺倒のままで良いのであろうか…。

中国の自動車や半導体の新車もしくは新型開発の所要期間は僅か12~18か月だという。それに対し、日本企業が既存製品を新型に更新する期間は、恐らくはもっと長くかかる。そんな従来型の生産工程管理や生産工程更新のやり方に拘る限り、日中の差は益々広がってしまうのではないか…。そんな恐れが、今回の質疑を聞いていて、小生の心に強く残ってしまった。

当⽇の様⼦

開催実績の一覧

©一般社団法人 関西アジア倶楽部