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第90回

日時 2026年6月17日(水)14:30~16:30
場所 りそなプライベートサロンReラグゼ
大阪市北区角田町8-1(大阪梅田ツインタワーズ・ノース24階)
講師 アジア経済研究所研究員
 丁可
テーマ 中国製造業の高度化とグローバル展開~日本企業はどう戦うべきか ~

鷲尾所感

関西アジア倶楽部の第90回、「中国製造業の高度化とグローバル展開~~日本企業はどう戦うべきか~~」、丁可アジア経済研究所・産業企業グループ長との質疑、いかがでしたか…。

失われた30年を云々される以前は、日本の製造業は文字通りに、世界に冠たる存在でした。それが、デフレと低成長を余儀なくされた、この30年の間に、事情は一変してしまった。“何故”そんなことになったのか…。

この質問への適切な答なくしては、今後進めるべき、日本の再建も実効的なものにならない。このような想いから出た、前回に続く今回のテーマ設定でした。

丁可さんは、先ず冒頭、中国製造業が、謂わば、世界を席捲している実情を紹介してくれました。世界の製造業付加価値に占める中国の割合は30%前後、それに対して米国とEUそれぞれはいずれも15%前後(両者合計で恐らくは30%前後か…)、対する日本は、2000年代初めは15%近くあったシェアは激減、今や5%。

おまけに中国ではGXとDX 分野で急速にシェアを拡大させている。例えばDX分野では、全世界224工場中、中国が110工場を占める等々。要するに、先端産業では米国と肩を並べている。オーストラリア戦略研究所の報告によると、重要技術74分野の内、米国がリードするのは8分野、対して中国がリードするのは66分野だとか…。

しかも、その開発の仕方も異なる。生成AIの世界では、米国がクローズド型であるのに、中国はオープン・ソース型。更に、ヒト型ロボットでは、現在、両国間で競争が激化しているとのことだが 、その実態は、米国が34社で展開しているのに、中国では31社で展開など等…。

中国製造業の特色は、高度化の担い手が新興企業だということ。世界のユニコーン企業500社の内、米国が224社、中国が150社。但し、先端製造業に限れば、中国が48社で、世界の85%以上を占めるのだとか…(自動車テックのユニコーンについては、中国18社に対し、米国は4社)。

何故、中国はそんなに強くなったのか…。

丁可さんは、中国独特の時間を活用する戦略の応用ぶりを指摘されました。具体的には、第四次産業革命という壮大な考え方。「100年に一度の機会の窓」を掴むことで、産業の段階的な発展を一挙に乗り越え、一気に世界の最前線に躍り出る、そんな構想の国家戦略。

この構想に基づき、2010年代以降、次世代情報技術、電気自動車、クリーンエネルギーなどの重要産業分野に的を絞った産業政策を展開。巨額の補助金をつぎ込むことで、民間からの活発な参入を促し、新興企業の勃興とイノベーション・エコシステムの形成に成功など等…。

しかもその際、中央政府は勿論だが、地方政府を積極活用し、以て、新興産業分野での地域間競争を刺激し続けた。こうした仕組みが、試行錯誤と実験の継続を可能にした。

しかし、以上のような構想と規模で積極展開された中国の産業政策だが、今やその問題点も顕在化している。具体的には、①資源配分の歪曲、②過当競争と過剰生産(地方政府は育成した新興企業の撤退を認めない)、③諸外国との貿易摩擦。

もっとも、そうした過剰生産の捌け口として、中国の一帯一路政策が大いに役立っている。具体的例としてはグローバルサウス市場。トランプ政権のグローバルサウス軽視とも相まって、中国の対グローバルサウス向け輸出は順調に伸びている。

しかも、その輸出増の際、中国のやり方の特色は、産業エコシステムそのものを海外展開させている点。日本などは嘗て、システムの基軸は本国に置いて、その末端部分を海外展開していたが、中国はそのシステム全体を持ち出そうとする(要は、いきなり海外で、最新工場を創ろうとする…生産基地、スマート工場、データセンター、クラウド、生成AI、Tokenなど等)。

そして、そのやり方が亦、世界的な過剰生産を促進してしまう。

かくして、世界市場で中国企業と米や欧州企業、日本企業との競争が激化する。

結果、日本企業にとっては、アジアで中国企業が,今や最大のライバルとなっている。しかも中国製品は安い、そんな利点をフルに使って…。

では、何故、中国製品は安く仕上がるのか…。

中国側は次の3点を強調する。①14億人という巨大な国内単一市場。②新興企業が担い手であるため、意思決定が速く、組織が柔軟で、組織コストも安く済む。③996という組織文化(朝9時から夜9時まで、1週間に6日働く、謂わば、日本流のwork/life/balanceを無視した働き方)。

こうした中国企業のやり方に対し、日本企業はどう対応しようとしているのか…。3つの具体的方向性が既に顕著。①中国企業が参入しない分野であえて投資を拡大(残存者の利益の追求)。②中国工場で開発した低価格の第3ブランドを海外市場へ輸出。亦、低価格が実現できない分野では、サービス・売り方などで差別化。③中国企業が参入しにくいインドにシフト。特に自動車分野ではこの傾向が顕著。

上記方向を前提に、日本企業は、④中国をR&D拠点として活用、⑤中国製造業の海外展開を、自社の商社機能や金融機能を使って、むしろ中国企業を助ける側に回って手助けしようとしている。

この⑤に関しては、米国企業が既に、この手法で中国企業を助けている由。例えば、米国企業は海外展開しようとする中国企業の海外市場広告を受注し、AMAZONなどは、2024年、海外に進出しようとする中国テック企業にAWSを積極活用させ、それを収益増に結びつけている。

最後になるが、フィジカルAIは日本製造業の再生の好機となるか…。

当然に、日本には“強み”がある。それは世界最高水準の“身体”。豊富な現場データ。強い現場改善力など等。ただそうした中、課題も多い。例えば、データが企業毎に分散し、AIとロボットの間も分散され、身体を創り、データを集め、AIを進化させ続ける、統合的な仕組みづくりがまだまだ…。そうした中では、最近のソフトバンクの動きには注目…。

しかし、そうした大企業だけの動きではまだ不十分。如何にスタートアップを、その革新性を保たせながら、全体システムの中に組み込んで行くか…(日本の大企業は、そんな場合、スタートアップを傘下に組み込み、人を送り込んだりして、結局はその革新性を失わせるケースが多い。そうしない方法は…)。

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